本日は、「学習活動のデジタル化」のお話。
まずは、先日の読売新聞の第一面の記事を見てください。

10/22~25にかけて(上)(中)(下)で記事が掲載ました。
(中)ではWifi環境の不備による授業の中断と「個別化」により沈黙する教室の問題、について、(下)ではタブレットを各家庭が購入する課題の記事です。
いかがでしょう。デジタル化の推進当初から危惧されていたことです。なぜ、日本は海外で話題になったものをありたがって導入したがるのでしょうか。『「使える英語」を身に付けるための英語教育』の記事でもお話しましたが、なぜ日本はうまく機能していた教育方法を簡単に放棄してしまうんでしょうか。自分の手を使って、考えながら板書する、練習する、繰り返す、江戸時代の寺子屋と同じことをしながら日本は明治以降の先進国としての教育成果をあげてきたのです。紙の教科書で十分です。よく話題になる「紙の本か?デジタルブックか?」の問題でも明らかなように、デジタルブックの最大の欠点は「総攬性」がなく、ピンポイントでの閲覧しかできないことです。「この内容、以前にあそこでやったことと関連してないか?」と思った時、紙ならパラパラめくりながら行きつくものを、デジタルではページ指定か、延々とスクロール...そんなことをしているうちにやる気など失せてしまいます。電子辞書を使ったことのある方はそのイライラ感は理解できると思います。最近は、このような機器を入れたから、ソフトを導入したから、使ってください、いや使ってもらわなくては困る、それが基本姿勢です。本末転倒です。現在主流の教科書の「デジタル化」、「タブレットやそれに伴うソフトの開発」の方向性とリズムが教育現場・現状とあっていない気がします。
授業は、「教員がいて生徒がいる」それが基本です。逆にそれさえあれば、授業は成立します。授業とはまさにface to faceでお互いの息遣いを感じながら行う真剣勝負です。その日の環境や生徒の様子によって同じ教材でも使い方が微妙に変わるのです。なぜ、なぜ生身の教員がいるのに機器をわざわざ介在させるのでしょうか。最悪の場合、教員の顔を見ている時間よりタブレットを見ている時間の方が多いのでは。
また、記事にも言及されていましたが、デジタル教科書が紙の教科書と同様に使えればともかく、教室内の1台のタブレットがフリーズしただけでも全体がストップ...授業で一番大切なリズムがズタズタです。心の中で、「どうしてくれるんだ!」と怒鳴ってしまいます。
もちろん、デジタル教科書にも良さがあります。個別対応が必要な教材の提供です。でも授業でやることではありません。家庭学習ですべきことです。授業は教員と生徒の活動が中心です。教員と生徒のインタラクティブな関係を重視するべきです。副教材として理解を助けるコンテンツなら、たまに使うプロジェクターで十分です。
経済状況が改善されない状況の中、無理して家庭が購入したそのタブレットだって数年したらカタログ落ちになって廃棄されるのです。全然eco-friendlyでないです。
私はこのような状況に陥っているのは「こんなことができたらいいな」「あんなものがあったら便利」...と教員が望むボトムアップの教育機器、教材、ソフトの開発を進めないからです。教壇にたったことのない官僚が、海外の「先進的(西洋的発想)」と思う教育理念や機器を盲目的に導入した結果だと思います。もちろん、高名な学者からなる諮問機関による研究授業やデモを通して出された研究や論文のアドバイスを元にしていることは当然ですが、その研究に使われる学校のレベルは上から5%くらいの優秀な学校が中心のはず。すべてのリテラシーで優れている生徒です。それで成果が上がったものが日本全国の生徒に当てはまるには無理があります。教育は泥臭い、地道な作業です。奇麗のまとまっているからといって効果があがるわけではないのです。
さらに文部科学省からの指示は絶対ですから全国津々浦々までその意向は浸透します。それが現場からすると首をかしげるものであっても、どう考えてもおかしいと思えるものであってもです。円周率を「3.14」から「およそ3」にした「ゆとり教育」にしてもしかり、各試験の特性や内容も分からないのに強引に「民間英語能力試験の大学入試導入」においてもしかりです。そして失敗とわかってもだれも責任を取らない。『検証する』『総括する』といったことばで終わるのです。私は、米国のように教育がすべて州に任されているのはどうかと思います。日本の文部科学省のような国の中枢機関がある程度統括すべきだと思います。それは『諸刃の剣』です。元が方向を誤れば、すべてが誤ることになるからです。
実は問題は『デジタル教科書』にとどまりません。『デジタル教育』全体に関係します。もう一度、有識者ではない下々の教員の意見も吸い上げ、『検証する』『総括する』に至る前に一度検討してもらいたいと思います。