今日は教育現場の評価システム『観点別評価』のお話。
『観点別評価』は、学校での成績の付け方と考えてください。高校に通わせている親御さんも一度は知っていてほしい内容です。アウトラインは以下の通りです。
《観点別評価の概要》
観点別評価とは、生徒の学習状況を規定の観点別に評価する方法。高校では新学習指導要領の施行に伴って、2022年度に導入。新学習指導要領で再整理された資質・能力の3つの柱「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」に沿った観点で、生徒の学習状況を評価。
《観点別評価導入の目的》
観点別評価導入は、指導と評価の一体化を図るためことを目的にしている。文部科学省は以下2点の教育活動において、学習評価の在り方が重要であると提言。
・教師が指導を改善すること
・生徒自身が学習を振り返り、次の学習に向かえるようにすること
学習評価を上記の教育活動につなげるためには、学習評価を充実させることが必要である。ペーパーテストの結果など表面的な評価だけではなく、多角的な評価を行うために新たに評価観点が整理され、観点別評価が導入された。また、指導と評価は教育活動の向上を図る「カリキュラムマネジメント」の根幹となっている。
具体教科(英語の場合)に落とし込むと次のような形になります。
高校英語の教科書「BLUE MARBLE English CommunicationⅠ」での「Lesson1 Friendships in the Digital Age:Part1~3」における評価規準
Part1~3での学習のねらいは以下の通りです。
上記の学習のねらいをもとに、以下のような評価規準が作成できます。
引用元:チャート式の数研出版 令和6年度用高校教科書のご案内「英語 観点別評価規準例」
学校では、上記の観点をA・B・Cの三段階の評価をつけ、その合計点で通常の5段階評価をつけることになります。その問題点について2点お話をしたいと思います。
〇言語は<知識・技能>と<思考・判断・表現>で分割できるものではない
<知識・技能>と<思考・判断・表現>に関して考えてみてください。言語である英語についてこの二つの観点を分割して評価することができるでしょうか。もう一度上の「評価規準」の表を読み直してください。この評価規準を満たすような試験や教材を作成することが可能ですか?各観点の個々の内容に関しては頷けますが、一回の総合試験の中で区別することは不可能です。個々の観点を評価できるような小テストを積み重ね評価すれば?と考えられますが、言語は個別の観点別に出てくるわけではありません。いつどんなふうに言語材料が出てくるかわからないから難しいのです。やはり、すべての観点が含まれるような100点満点のような総合的な試験が必要なのです。総合的な技能の組合せである言語を分割して評価しろ、ということ自体ナンセンスです。現場では、一応、この問題は<知識・技能>、この問題は<思考・判断・表現>と便宜的に分けたりしますが、実際には分かれているわけではありません。これはどちらの観点か?なんて分別に時間をかけていては本来の授業の中身が薄くなるだけです。本末転倒です。
次はもっと深刻です。
〇観点別評価による評価(評定)の逆転現象
以下の例を見てください。
便宜上、各観点同等で35点とします。105点満点の試験を仮定します。
<知識・技能><思考・判断・表現><主体的態度>
配点 35 35 35
※ A(28点以上)B(14点以上)C (14点未満)
A君 28点 A 28点 A 12点 B 68/105 「 A 」
B君 27点 B 27点 B 24点 B 78/105 「 B 」
一番極端な例をあげましたが、68点得点したA君はAの評価、多分「5」でしょう。それに対し78点得点したB君はB評価で「4」でしょう。これで、生徒や保護者は納得するでしょうか?指導と評価の一致といくら言っても、モヤモヤしたものが残ります。進学校であればあるほど、モヤモヤは強くなり、不信感を生みます。教師に不信感をもったら教育効果は半減です。実際に、学期末に苦情を言う生徒が出てきます。頑張ったのに総合点では見てくれない…教員は『観点別評価のシステム』を説明し、このように数値としては出てくるのだから仕方がないと返すのです。このようでは学校自体を信頼しなくなります。もちろん、教員はそのような矛盾を感じさせないようにするために、A,B,Cの三段階評価にプラス、マイナスをつけ五段階にして最終評価を出したり、すべて成績を出したあと矛盾点の有無を確認をしたり、努力をします。ただ、最初に戻って、それぞれの観点で出題していた問題が、その観点の問題として妥当だったのか?言い切れる教員がどれだけいるか。もともと言語は「観点別」に成り立っているわけではないのですよ。
どうすればいいのか。学校に任せれば良いのです。学校は様々です。皆さん、「多様性」を声高に叫んでいるではないですか。特に高校は出発点が違うのです。高校入学当初から英語検定の2級を取得しているのが当たり前の学校もあれば、アルファベット26文字が怪しい生徒が多い学校もあるのです。どの学校も、引き受けた生徒を一歩でも二歩でも能力を伸ばしてあげたいと必死です。それを同じ物差しで、同じ目標に向かって、同じリズムで教えなさい...ありえないことです。(そう考えていみると、学習指導要領の基盤がゆるんでしまいますが)少なくても、その「評価」は、現実に生徒を前にしてその生徒に応じた評価、生徒も保護者も納得する評価を教員に任せてほしいと思います。確かに、ひと昔前の教員はペーパー試験だけて評価をつけていたかもしれません(今でも学校によっては一番よい評価である学校もあります)。ただ、この現代、通常は普段点、授業態度、学習に取り組む姿勢は加味して成績は出します。「評価規準」に書かれているポイントは当然、教える側は意識して教えるべきですし、今もやっています。評価方法は学校を信頼して任せてもらっていいのではないでしょうか?
少なくても文部科学省が『観点別評価』の効果とあげている
・教師が指導を改善すること
・生徒自身が学習を振り返り、次の学習に向かえるようにすること
に関して導入前と比べその方向に向かっているとは思えません。
きっと、「〇〇の学校の成果を見てほしい、できているではないか、指示通りの教育と評価をしてないからだ」といわれてしまうでしょう。ただ、全国の9割以上の学校の実態をようく見てほしい。教壇に立っている教師の本音を素直な気持ちで聞いてほしい。アンケートでもなんでもしてもらえれば、わかるはずです。形が整えば、効果があがるなんてことはありません。教育は泥臭い作業なのです。
どうか、文部科学省を始め、有識者、各教育委員会の皆様にこの点を是非ご理解願いただきたい。


